そうだ、この人はこういうのが得意な人だ。
相手の隙を故意に作り、そこに嵌った瞬間有無なしに土足で踏み入りグチャグチャにしてくる、そんな人。
私の気持ちなんて気にしてない。
この人にとって大事なのは、相手をどこまで揺さぶれるかって事で。
私とカイさんがどうなろうが、興味なんて1ミリもないんだろう。
「お前、すげぇ大事にされてたもんなァ?」
「……」
「なのにそれを手放したのは、オマエ」
「…ッ」
「 "カイくんのため"? "アヤセのため" ?ーーーふざけんな、そんなの全部ただのお前のエゴだ」
「……」
「誰もそんなの望んじゃいなかった。誰一人望んじゃいねぇのに勝手に自己完結しやがって、バカ女」
アスカさんは捲し立て、ボロボロになってる私の気持ちを容赦なしに潰した。
エゴイストでバカ女の私はただ黙って俯いてる事しか出来なかった。
膝の上に作った拳に力を込めてそこで耐えるしかなかった。
私が出した答えの言い分も真意も言わないって決めた。
これは私が決めた事であって、誰にも言うつもりもない。
もし言ってしまったら分かっているから。
「…もういいんです。もう、終わった事ですから」
ーーーカイさんが傷つくって、分かっているから。

