なんでとか、どうしてだとか、色んな言葉が脳内を右往左往して言葉すら出なかった。
一興すると周囲の事が頭から離れるってこういう事なんだと思った。
あんなにも騒音だった筈なのに音は消え、視線は交差したままで催眠術にでもかかったように動かない。
喉は枯れ声を出そうにも出なくて、自分の体なのに私の意志に機能しない体が気持ち悪いと思った。
「…一先ずこんなとこで死にたくねぇから場所変える」
そう言ったアスカさんはそのまま私の腕を掴んだまま小走りに横断すると何処かへ向かい出す。
私が逃げるかと思っているのか、腕を掴む手が少し痛い。
渡りきった頃にはもう信号が赤になってて車はすぐに走り始めた。
歩行者信号器なんてたかが知れてる時間なのに、あそこにいた時すごい時間が経ったように思えた。
時間の感覚を狂わせるほどの衝撃を受け、引きずられるように向かった先は駅前にあるファミレスだった。
時間帯もちょうど夕飯時でガヤガヤしてる店内は比較的学生が多くて、うちの生徒がいないか目を配らせたけどわからなかった。
窓側の席に案内され、席に着くなり「ドリンクバー二つ」と勝手に注文したアスカさんは煙草を加える。
だけど何か思い立ったように煙草をすぐ灰皿に押し潰した。
「悪い忘れてたわ、お前煙草嫌いだもんな」

