「…なんか夏子ちゃん少し変わった?」

「は?」





バスに乗り、隣に座ったヘラ男からそんなことを言われた。


変わったってなにが。


髪型はいつも通りだが。





「うーん、なんか…うーん」

「ハッキリして、男でしょ」

「そういうとこは変わってないんだけどなんて言うかさ、雰囲気が少しだけ柔らかくなった気がするんだよね」





雰囲気?なに言ってんだこいつ。


白い目で見ながらハッと鼻で笑う。





「折角の可愛い顔が台無しだよ」

「うるさいわアホ」

「ぶっちゃけ俺、結構前から夏子ちゃんのこと狙ってたわけよ」

「……はぇ?」




ね、ね、狙ってた…とは。


それはその、そういう意味よね。


ポカーンとしてる間にもヘラ男は語る。





「だって男嫌いなんてちょっと良くない?燃えるじゃん」

「意味が分からん」

「男嫌いの子を、俺に惚れさせることができたら最強だと思わない?」

「思わない」





どこが最強なの。


まあ男の立場からすると、男が嫌いな女だけど俺のこと好きなんだぜ。
そういう女を落とせた俺すごくね?


って感じになるんだろうね。


男ってバカだから。




「そんなわけで夏子ちゃんをモノにしようと思って観察してたんだけど。ほら、好みとか性格とか知りたかったから」





ひとつ目のバス停で停車し、数人乗り込んでくる。




「そしたら結構タイプでなんかイイかもと先月くらいから見続けてるわけですよ」

「つまりはストーカーなんだ」

「今のどこをどうとったらそう解釈できるの…」




え、そのまんまじゃん。


ストーカーでしょ、どう考えても。