「へえ、夏子も大変だね」
「本当よ」
体育館で、バレーをする女子たちとそれを観戦する女子。
隣では男子がバスケをしている。
チッ。
男子がバスケなんて定番すぎるのよね。
体操とかでもしてればいいのに。
「夏子は伊藤くんのこと好きじゃないの?」
「当たり前でしょ。まず性別から受け入れられない」
「…そっか。じゃあ人としては?」
「人としても無理」
軽くてヘラヘラしててウザいもん。
あんなのが仮でも彼氏だなんて人生の汚点なのに。
「……ふうん」
「どうかしたの?」
「別に」
ふいっと顔を逸らされて、クイッと体操服を掴まれた。
「あれ、伊藤くん」
「え?」
歩美が指したのはディフェンスを頑張っているヘラ男の姿。
はっ、こういうとき漫画だったらダンク決めてる最中だろうよ。
「かっこいいね」
「どこが?」
「爽やかだし、女子はみんなキャーキャー言ってるし」
確かに。
バレーをしている女子までもが、ヘラ男のほうに熱い視線を送っている。
くそ、これだから顔だけのやつは。
「なによりさ」
「うん?」
内心舌打ちしながらもヘラ男の姿を目で追う。
「楽しそうで、いいよね」
「………」
体育のヘラ男は、いつもと違って無邪気に笑っていたのでした。



