「まず、Aくんが夏子ちゃんに告白します」




わたしは頭の中で想像する。





「夏子ちゃんは今まで告白されても素っ気ない返事しかしませんでした」




それはいつかわたしが楓くんに話したやつだ。




「でも、冬樹を好きになった夏子ちゃんは自分が冬樹にフられる場面を思い浮かべました」




伊藤くんとわたしは黙って聞く。





「自分も素っ気ない返事で断られたら悲しい、と感じます。


相手の好き、という気持ちには答えられない。


ならばせめて、なぜ断るのか


それを伝えなければならないと思い始めます。


誰が好きなのか?


私は伊藤冬樹が好きです。


と、こうなるわけだよぉ」





小説のように語った楓くんは最後、素に戻った。





「で、その伊藤冬樹が好きですってところを録音すればいいってわけぇ!

どう!?」




まだ夏子が伊藤くんを完璧に好きになったという保証はない。


つまり、これは賭け。


伊藤冬樹が好き。


そう言わなかったら、この作戦は失敗するわけだけど……。