Voice-君の声をもう一度-

「おー。おはよう。ソラ」




……。いや、おはようじゃないから。

リビングに行くや否やに聞こえるはずのない声が聞こえ、私は表情を引きつらせる。

ヤダなぁ。私。頭痛のせいでとうとう幻聴まで聞こえてくるようになったのかぁ。

あー。ヤダヤダ。

夢なら早く覚めろ、と言わんばかりに自分の頬を思いっきり叩くと、隣にいたお姉ちゃんと目の前の彼が同時に目を剥き、彼は恐ろしい形相でこちらに歩み寄るとガッと私の腕を掴み、お姉ちゃんは私の頬を容赦なく挟みこむ。




「空!! 何やってるの!!」

「お前っ、せっかくのなずな似の美人な顔に傷でもついたらどうするんだああああ!」

「ケイくん! 違うでしょ!?」

「いや、合ってる。オレ、なずなが傷つくのは見たくないから、コイツがこんなことすると、なずなが傷ついてるように見えて……オレっ」




今にも泣き出しそうな表情をする彼に、私はやれやれと息をつく。

月城圭斗。お姉ちゃんの彼氏さん。根は優しくて、見た目はモデル並みにカッコいいのに、お姉ちゃんのことを溺愛し、お姉ちゃん以外の女性にはニコリともしない――私はお姉ちゃんの妹だから優しくしてくれるらしい――癖のある人

妹としては、浮気もしなさそうだし、お姉ちゃんを大切にしてくれそうだから満点な人なんだけど……。

いつもいつもお姉ちゃんに重ねられるのは、ちょっとイラッとくるところがある。

涙目でお姉ちゃんを見上げる月城さんに、お姉ちゃんはぐっと言葉に詰まったかと思えば次の瞬間には苦笑を零して、彼の頭をよしよしと撫でる。



「もう。仕方が無いなぁ。ケイくんは。大丈夫よ。私はどこも傷ついてないわ」

「なずな……っ」

「だから、ホラ。泣かないで。一緒にご飯食べましょう? ね?」

「なずな……。好きだよ。愛してる」

「うん。私も」




あー。うん。分かった。

とりあえず、ご飯食べようご飯。

私の存在など彼らの頭には欠片程も残ってないのだろう。

キスでもしかねない雰囲気に、私はくるりと向きを変えると席につき、頂きますと手をあわせてご飯を食べ始める。

いつもの朝。

何でか知らないけど月城さんがいて、私の目の前でラブシーンを始める二人。

初めは戸惑ったけれど、今では慣れた物で、二人の世界を壊さないように静かに朝の支度を整えられるまでになった。

自分の部屋に戻って収まった頃に戻ってくるのもいいんだけれど、ご飯を目にした途端お腹が空いたために、私は迷わずご飯を食べる方を選んだ。