Voice-君の声をもう一度-

いつも私優先で、自分のことは二の次なお姉ちゃん。

その所為で、何度も傷つき、色んな物を失ってきたのに、私を貶すどころか愚痴一つも零してくれない。

私にはもったいないぐらいの良いお姉ちゃん、なんだけど……正直、とても心配だ。

きっと。お姉ちゃんの苦しみや悲しみは、お姉ちゃんの彼氏さんの月城(ツキシロ)さんが一緒に背負ってくれている。

それでも。
こんなこと、想像したくないけれど。もし、お姉ちゃんが月城さんさえ失ってしまったら、きっと――……。

私は、知らず知らずの内に視線を下へと下げ、ひんやりとしたフローリングを見つめる。

お姉ちゃんは、私に何も話してくれない。

多分それは、お姉ちゃんなりの優しさ。それは分かっているんだけれど……。

つらつらとそんなことを考えていた私だったのだが、突然の頭痛が私の思考を遮断した。




「……っ」

「空? 頭痛いの? 大丈夫? 最近ずっとあるみたいだけど……」



へーきだよ。

心配しないで。お姉ちゃん。

激しい頭痛の所為かこみあげてくる吐き気を呑みこんで、私は無理やり浮かべた笑顔をお姉ちゃんに向ける。

高校生になってから、毎朝のように起こる頭痛。

それは不思議なことに、お昼や夜には現れず、毎日のように朝にやってくる。

最近では吐き気もついてくるもんだから、寝起きの気分は正直あまりよろしくない。

私の顔色が余程酷かったのか、心配そうに顔を歪めたお姉ちゃんは私の額と自分の額に手を触れて、私の瞳をじっとのぞきこむ。




「熱は……無いようだけど……。ねぇ、空。一度病院に――……そんな首振らなくても」



千切れんばかりに首を左右に振る私に、呆れたようにお姉ちゃんはため息をつく。