ジリリリと私が嬉々として選んだ爆音目覚ましが鳴り響き、私に朝を教えてくれる。

その音は家中に響いているらしく、家族たちにはうるさいことこの上ないそうな。

テレビの音もかき消す勢いで鳴り響くその音から逃れるべく、私はずり下がった布団を引き上げて頭まで被った。

……うるさい。後もうちょっとだけ。

昨日は全然眠れなかったんだよ。何でかは分からないけど。

もぞもぞと往生際悪く布団の中にもぐりこむ私の部屋に、ついに悪魔がけたたましい音をさせて私の部屋へとやってきた。

バァンと荒々しい音を立てて扉を開けると、鳴り響く目覚ましを殴り倒す勢いで止めて、私の周囲を固めていた布団をはぎ取った。



「とっとと起きなさい。空! あんたの目覚ましうっさいんだから、もたもたしないの!!」




ベッドの上で赤ちゃんみたいに丸まっている私に、悪魔――もとい、お姉ちゃんは呆れたようなため息を零すと、未だ夢と現実の狭間を行き来している私の身体を無理やり引っ張り起こす。

そして、目線を合わせるようにその場に膝を折ると、相変わらず可愛い笑顔を浮かべて私の頭を撫でた。




「おはよー! 空ッ」




おはよう。お姉ちゃん。

自分の気持ちを伝えるものがないから、私は返事の変わりにギュッとお姉ちゃんに抱きつくと、彼女は私の頭をよしよしと撫でる。

……毎朝思うけど、これ絶対子供扱いされてるよね。絶対。

まぁ、いいけど。……撫でられるの、好きだし。

複雑な気持ちになって、中途半端に頬を膨らませる私。

それを、私から身体を離してみたお姉ちゃんは吹きだすと、私の頬をツンツンッとつっつく。




「何? 拗ねてるの? 相変わらずかわいーねぇ。アタシの妹はっ!!」




そう言うお姉ちゃんのが可愛いけどね。

私のお姉ちゃん――なずなは、私の3つ年上のお姉ちゃん。

今年大学生になったばかりのお姉ちゃんは、優しくて元気で美人な、私の自慢のお姉ちゃんだ。

皆と同じように、友達と遊んだり彼氏とデートだってしたいはずなのに、ほとんど我慢して学校が終われば真っ直ぐに家に帰ってきてくれる。そんな、お姉ちゃん。