美咲は一斗の家の前に来て
5分以上立ち尽くしていた。


“ヤバい、早くしないと不審者かと思われちゃう!!"

“ふぅー"


小さく息を吐き心を落ち着かせて
思い切ってインターホンを押してみた。


「はい」

若い男性の声だけど一斗ではない。

「あ、あの藤ヶ谷と申します、一斗さん、いらっしゃいますか?」

「ちょっと待ってて」

“待ってて!?…良かった居るんだ"

暫くすると有名私立高校の制服を着た男の子が門を開けた。

「どうぞ」

「お邪魔します」

美咲の前を歩く颯は
真っ直ぐ前を向いたまま

「一斗の友達?」

「はい」

“一斗に似てる"

「僕は兄の颯です、よろしく」


そう言って振り向いた颯の
口元は笑っているが
目は笑ってなかった。


美咲は1週間前を思い出す
一斗と颯の間に何があったのだろうか
歩きながら考えると緊張が増す。

一斗に会える期待と不安で
足が震えそうになった。


“一斗やっと会えるんだね"



颯の後を早足で歩いた。