「一斗も綾音ちゃんが好きになった?」

「俺はずっと美咲だけだ」


膝に置いた手はギュッと
握られ、その上に涙の滴が落ちた。


「でも俺は誰ひとり守れなかったんだな」


「綾音ちゃんとは?」

「連絡もないし会ってないよ」

「私は…もう要らない?」

「要るとか要らないの問題じゃないだろ?」


2人は、ほぼ同時に顔を上げた。

「私の事…嫌い?」

「好きに決まってる!」

一斗の口調が強くなった。


「なんか…今だって一斗が遠くにいるように感じる、私だって側に居たいよ
私も何処かに連れ出してよ」

「…それは」

「出来るわけないよね」


再び俯いた美咲の手を
一斗は握りしめた。

「美咲!」


一斗は美咲の手をひいて
歩き出した。