一斗は日陰のある砂浜に綾音を座らせた。

少しの間、寄せては返す
波を眺めた。



「綾音、そろそろ帰るか?」
綾音は一斗の顔を見上げ
少し悲しい表情になっていった。


「あのね…もう一度だけ、最後にもう一度だけ会いたい」

「もう会わない方が良い
綾音が傷付く事になる」

「どうしてもダメ?」

「…うん」

「少しだけ…10分だけ」

「ゴメン約束は出来ない」


「私を見て…」

ワンピースの前ボタンを3つ外し、両手で広げた。

「綾音!」

痛々しい手術の傷痕
そこに一斗の手を取り胸にそっと押し当てた。


「これが私なの」

「…」

「本当は見せたくないけど
一斗には、わかってほしかった、好きな人の全てを知りたい、知ってほしい…これが本当の愛だから」

一斗は綾音の胸から手を離した。


「ゴメン…俺は」

綾音は懇願するように

「最後にするから、手術の前にもう一度…」

綾音は泣き崩れ、その場にしゃがみこんだ。