車窓の向こうを見つめる綾音の笑顔は一見、穏やかに見えるが
やはり身体も華奢で肌の色も健康的な娘と比べたら 色白で全体的に弱々しかった。


「電車に乗るの何年ぶりかなー」

「そんなに久しぶり?」

窓への視線を一斗に戻し
小さく頷いた。


「いつもパパかママの車だし…お兄ちゃんは時々外に連れ出してくれたけど…」

“葵…"

「綾音ちゃん、今日は俺のこと兄貴だと思って甘えてなっ」

「ありがとう…あの!!お兄ちゃんなら綾音って呼んでください」

「わかった、じゃあ綾音も一斗で良いから」

「呼び捨てなんて…」

「だって、せっかくデートしてるのに先輩とかって…」

「デート…なの!?」

綾音は一斗を見て首を傾げた。

「デートでしょ?」

一斗は優しく微笑んだ。