綾音の顔色がどんどん悪くなっていく。

「ハァハァ…」

苦しい息づかいで両手で自分の膝を支え前屈みになった。

通りかかった看護婦は綾音の顔を覗き。


「…綾音ちゃん?階段で来たの?」

綾音は小さく頷き笑顔を見せた。

「綾音ちゃんはエレベーター使っても良いんだよ」

看護婦は優しく背中を擦った。

「大丈夫です」

一斗も顔を覗き込み

「具合悪いのか」

綾音は首を横に振った。


綾音の顔を覗いてた看護婦は一斗と目が合った。

“違うのよ"

看護婦の目は、そう言っている様だった。


「綾音ちゃんは心臓の病気で激しい運動は禁止なの」

「綾音ちゃん…」

「お友達かな?綾音ちゃん、お願いね」


「はい」

看護婦は忙しそうに去って行った。


「先輩、ごめんなさい」

綾音は膝から手を離し身体を起こした。

「いや…知らなかったとは言え悪かった、大丈夫か?」

「もう大丈夫です、病室はそこです」

指を差す先には葵のいる
402号室があった。