夏祭り、前日の夜。
奈実乃の様子がおかしい。
楽しみでよそよそしていた昨日とは少し違うおかしさだ。
コンコン
「直樹、入っていい?」
奈実乃が俺の部屋に来た。
『いいよ。どうかした?』
俺が問うと、奈実乃は作った笑顔で言った。
「明日、やっぱ二人で行かない?」
一瞬ビックリした。
だけど、初めに浮かんだ言葉は。
『なんで?』
「先輩、彼女いたんだっ。それで、明日の祭りにその人連れてくるんだってっ。」
慰めてあげる。
こないだまでの俺ならそれを選んだだろうな。
でも今は、
『なんだそれ、俺はソイツの代わりかよ。俺はそんな女に困ってねえから』
冷たく突き放す。
奈実乃の顔は余計に引きつった笑顔になる。
「そ、そーだよね!ごめん!……じゃあね!」
ドアを閉めて階段を駆け下りる足音は耳に染み付くようにリピートされる。
いいんだよ、昨日決めたじゃないか。
奈実乃の事は諦めるって。


