夏祭りの日、毎年二人で行く時に着ていた浴衣を奈実乃は着ていた。
「じゃじゃーん!可愛いでしょ?」
それを着て、可愛く見せたい相手は俺じゃあない事はよく分かってる。
だけど、一番初めに見せてくれて一番初めに感想を言えて俺は嬉しい。
『似合わねえー。』
「サイテー!別に直樹にはどう思われたっていいもん!」
素直に似合うよなんて言えないけど。
「似合ってるね、高濱。」
「あ、あ、ありがと!水島くん!」
同い年のくせにサラッと奈実乃の欲しがる言葉を言う水島が頭にくる。
だけど、水島は奈実乃ことを好きなわけではなかった。
「小谷、ヨーヨーあげる」
「わあ!ありがとう水島くん!」
そう、俺が誘ってしまった小谷さんの事が好きだったんだ。