数日後……

「ねぇ、聞いた⁉︎中野先生の代わりで来る先生のウワサ!」
「あ、聞いた聞いた!すんごくイケメンだってね!」
「ヤバイ!それホントだったら、ウチ授業じゃなくて先生ずっと見てちゃいそ〜!」

莉沙の言っていたウワサはいつの間にか広がっていて、一部の女子が騒いでいた。

まぁ、いつも通りっちゃいつも通りだけど。

キャアキャアと騒ぐ女子を横目に、あたしは机に座って次の授業の準備をしていた。

そこへ、なぜか雅人がやって来た。

あたしたち3人の中で、雅人は唯一クラスが違う。

あたしを怒らせるタネだから、重要な用事がある時以外来るなって言ってあるんだけど…

それをムシして、よくひょっこり顔を出しにくる。

その度に、あたしは顔を引きつらせながら追い払っていた。

でも、今日はいつになく真剣な顔をしていた。

「…美寧、ちょっと、いいか?」

「いいけど…。どうしたの?そんな真剣な顔して。」

「あ、いや…ここじゃ話しにくいからさ、ちょっとついてきてくんね?」

ますます怪しい。

てか怖い。雅人が真面目になると、こんな怖いっけ…。

そうして雅人について行くと、階段の下に着いた。

こんなひと気のない場所まで連れてきて話すことなんてなんだろう…。

「で、話ってなに?早くして欲しいんだけど。」

「……中野先生の代理教師の話は知ってるよな?」

「あー知ってますとも。イケメンだとウワサの教師でしょ?」

わざわざそれを話しにあたしをここまで連れてきたのかコイツは…!

「用はそれだけ?ならあたしはかえ…。」

そう言って、雅人の横を通って帰ろうとしたら、ぱしっと手首を掴まれた。

「……なによ、早くしろっていったでしょ。」

もう一度そう言うと、

「………ろ。」

「え?なに?聞こえない…」

「気をつけろよ、美寧。」

……って言われても…

「なにをよ。」

『裏』を見せないようにしろとか?

第一『裏』になっちゃうのって、大抵あんたのせいなんだけど。

中々その理由を言わない雅人にイライラしていると、

「……その代理教師にだよ。」

ボソッと雅人が答えた。

「はぁ?代理教師?なんでよ。
第一関わらなきゃいい話じゃない?」

そう言って、掴まれていた手を振りほどく。

「用が済んだなら今度こそ帰るから。じゃあね。」

ひらひらと手を振って立ち去る。

その姿をみて

「……マジで気をつけろよ、美寧。ぜってーそいつと関わんじゃねーぞ。」

と、雅人が言っていたのには気づかなかった。