だからその日も、目は合わないんだと思っていた。



いつもみたいに丁寧に黒板を消しながら、やっぱりなにもなかったじゃない、と白井君の奔放さを改めて実感していた。



ふっと背後に息を詰めた気配を感じて振り返ると、



―――っ?!



いつものように、白井君が立ち去っていなかった。




黒板と、教卓の間の私にとっては十分すぎるほど狭い空間に二人は真正面から向き合って立っていた。




『……放課後』




いつかのように一瞬ぐっと腕を引っ張られ、段差から落ちそうになって一気に近づいた整った顔にどぎまぎしていると、


何がなんだかわたらないままに解放されて白井君は今度こそさっと立ち去ってしまった。