朝日の昇る静かな早朝。
人気の無い小さな駅のホームの上、携帯を扱いながら電車を待つ少年が1人。
サラサラな黒髪に整った顔立ち、細身で高身長の彼の名は久柳 慎哉(クリュウ シンヤ)。
夏の学生服を身に纏う彼は此処から少し離れた高校の学生である。
「おっはよう慎哉!お前がこんな時間に居るなんて珍しいな!」
電車の到着を知らせるアナウンスにも負けぬ声。
振り返れば、制服を着崩した少年が1人微笑んでいた。
彼の名は廣田 輝(ヒロタ アキラ)。
栗色の髪をし、前髪をピンで留めた慎哉の同級生の少年である。
「今日は朝練休みなのか?にしては早いよな」
「まぁ、ちょっと自主練でもしようと思ってさ」
「へぇ~、相変わらずの真面目ちゃんだな、お前は」
剣道部に所属する慎哉。
毎朝朝練が行われているのだが、今朝は珍しく休みである。
練習も無いのだから、後3、4便後の電車に乗れば登校時間には十分間に合う。
しかし慎哉はこの時間の電車を選んだ。
社会人も学生も見当たらないこの時間を。