ナイフを握る輝は何の迷いも無く男を斬りつける。
友達を救いたくて、この状況からどうにか逃げ出したくて、只必死に。
「……っ……!?」
男へと突き出したバタフライナイフ。
懸命に振るわれたその刃は男の頬を掠める事無く空を切る。
次の攻撃へ移ろうと刃を引くも、その腕は男に掴まれあっと言う間にねじ伏せられた。
「ナイフ、返してくれてありがとう」
倒れる輝から容易にナイフを奪い取る男は嫌味に笑う。
その笑みに恐怖を覚え早まる心臓。
振り上げられた煌めく刃に息を呑む。
「そして、さようなら」
それは一瞬で、抵抗する暇も、足掻く隙さえもなかった。
木霊する悲鳴。
男の頬に散る鮮血。
柄の先の無い刃。
全てを理解し走る激痛。
血を吐く輝の胸には鋭い刃が突き刺さる。

