「夏希を連れて後ろへ逃げろ、輝」
「…っ……?」
竹刀袋から抜き取り柄を握る。
ぼそりと呟いた慎哉は床を蹴り飛び出した。
「あぁぁーー!!」
「ん?」
一気に男との距離を縮め容易にナイフを払いのける慎哉。
そして無駄の無い動きで振り上げた竹刀を素早く振り下ろし男に面を繰り出した。
「なっ!?」
「フフン♪」
確実に、必ず、絶対に、相手にダメージを負わせる事が可能だったその攻撃。
しかし慎哉が振り下ろした竹刀は男の頭上、後数ミリの位置で停止する。
「残~念。立ち向かってきたその勇気は買ってあげるけど、殺す気で来ないと」
「!?」
頭上の竹刀を指で弾く。
軽く弾いた只それだけなのに、慎哉の身体は仰け反りバランスを崩す。
当たらなかった攻撃、男が浮かべる余裕の笑み。
動揺しながらも危険を感じ回避行動に移るが間に合わない。
「っ……ぐっ……」
逃がさないと言わんばかりに掴まれた首。
片手で締め上げるその力は尋常ではない。

