華奢な肩をカタカタと揺らし、恐怖に見開く瞳に涙を浮かばせる夏希。
落下した際に打ち所が悪かったのか顔色の悪い輝の額には汗が滲む。
「くっ……」
心配そうに2人へと目を向け男を睨む慎哉。
警戒しながら逃げ道はないかと思考を巡らす。
男の後方、先程抜け出そうとした窓からの脱出。
これはどう考えても無理がある。
男がそう簡単に通してくれる筈も無く、例え上手く通過できたとしても直ぐに捕まるのが落ちだ。
前が駄目なら後ろはどうだ。
敵の居ない車両への逃走。
横転した車内を駆けるのは少し難があるが不可能ではない。
男は追ってくるだろうが、追いつかれる前に脱出路を見つければ逃げ切れる。
男を説得するという手段もあるが、目の前のこの人物が話の通じる相手とは思えない。
となると、選ぶべき選択肢は……
ゴクリと息を呑む慎哉は丁度傍に転がっていた竹刀へと手を伸ばす。

