「え…何……?ちょっと…冗談やめてよ……」
突然目の前から消えた2人。
戸惑う夏希は崩れた窓枠から恐る恐る車内を覗き込む。
「ねぇ……あき──!?」
2人の名を呼ぼうとしたその時、勢いよく伸びてきた男の腕。
その手は夏希の顔をがしりと掴み悲鳴をあげる隙さえ与えず車内へと引きずり込んだ。
「何だ学生か。これからが楽しい時期なのに可哀想に」
銀髪に黒いスーツ、奪ったであろう車掌の帽子を斜めに被る若い男。
その男は他人事のように言うと夏希を乱暴に投げ飛ばす。
「っ……」
何とか夏希を受け止めた輝。
彼女を背に隠す輝はぺっと血を吐き口を拭う。
「残念ながら逃げ場なんてどこにも無い。これから君達を待ち受けるのは死あるのみ。さて、誰から殺されたい?」
ジャケットから取り出したバタフライナイフ。
器用に開閉したそれは赤い血でべっとりだ。

