そんな妄想をしていると、

「おい。」

と、声がかかった。

「ん、何?」

「俺、お前のこと好きだ。」

雰囲気のカケラもなく言われたから、一瞬聞き間違いかと思う。

ケド、佐伯君の顔が真剣で、聞き間違いじゃないんだって、本気なんだって思う。

「え、でも…、」

「知ってる。好きな人がいるんでしょ。しかも、サッカー部の武内さん。」

私が、何か言おうとする前に、佐伯君が口を開いた。

「な、なんで知ってるの?」

「なんでって、見てたらわかる。好きな人だもん。」

「え、あ…そんなものなのかな。…あ、そう。私は、武内先輩が好き。だから、佐伯君とは…」

「ちょっと待って。返事は、今度でいい。でも、今度はすぐに《はい》って、言わせるから。」

そう言って、佐伯君は何処かに歩いて行った。