女バス部がサッカー部に恋をした。

「これ、忘れ物。」


走って追いかけてきてくれたのか、少しだけ息が切れていた。


無理もない。


ここは美術室から少し離れた階段を下りたところだ。


そこそこ距離がある。


武内先輩の手には、私の筆箱があった。


プラスチック製の四角い、パステルカラーのもので、「mami」というシールが張ってある。


「す、すいません。ありがとうございます。」


武内先輩はいえいえ、と言って筆箱を渡す。


武内先輩に触れられた肩が熱い。


(私、まだ先輩のこと…)


そんなことを意識してしまう。


「あ、でも、先輩がなんで美術室に…?」


「あぁ、それね。恥ずかしい話、提出のヤツが終わってなくてさ。放課後は部活あるから昼休みにやろうと思ってね。」


それは、それは…


(サンキュー神様!)