キーンコーンカーンコーン…

放課後の始まりを告げるかねが、なりひびいた。
ああ、やっとだ。

「愛弓ーっ今日一緒にかえれるー?」

この子は、市井春乃。幼稚園生のころからの親友で、もちろん私が宇宙飛行士になりたかったことを、知っている。  

「あっ、はるの、ごめーん!
今日は無理っ!」

いくら親友でも、先生が好きだなんていえなかったから、理由も言わずに断った。

「あ、そーなの?わかった!
また明日ねー♪」

春乃のこーゆーとこ、好きだな。
一緒にいてつかれないっていうか。

「西野、またこないだと同じばしょな!」

昼休み、先生に無邪気に声をかけられたことを思い出して、あわてて教室をでる。

目指すはもちろん!選択教室11!!

「せんせ!…わぶっ?!」

どんっ

慌てていた私は、半開きになっていたドアに真正面から激突した。

「あ、愛弓…?」

「いったぁ…」

反動で座り込んでしまって、そこから立てない。
うう…痛みより恥ずかしさで、顔があげられないよぅ…

「大丈夫か!?」

立ち上がらない私を見て心配したのか、先生がこっちにくる。
余計恥ずかしくなるじゃん…

「だいじょぶ、です。」

「顔真っ赤!ほんとにへーき?」

た、たしかにかおぶつけましたけど…
顔が赤いのは先生のせいですよ。

「大丈夫だから大丈夫なんですっ!」

顔をそむけて返事する私を見てようやく安心したのか、先生が笑い出した。

「な、何笑ってるんですか…」

「悪い…おもしろすぎて」

まだ笑ってる…
もう先生!私がどれだけ恥ずかしいか…

「…ふう。笑いすぎて疲れた。
さ、立てるか?」

先生が私に向かって、手を伸ばす。

え…先生の手につかまれって!?
むりむりむりむり。

体が固まっちゃって、うごけない。

「愛弓?」

「ひ、一人で立てます…」

あわてて立とうとしたら、さっきのでほどけてしまっていたのか…靴ひもにつまずいて先生の方に倒れ込んでしまった。

「わ、あっ!」

ま、まってまって。
手つなぐのすら恥ずかしい私が、いまは…

先生の腕の中!?

先生のにおいでくらくらする…
せっかくだから、ちょっとだけこのままでもいいよね…?

ああ…先生あったかい…

「なにやってんだよっ」

「うぐっ」

先生が、私を引きはがす。
ああ…もっとこうしていたかったな…って。

私、先生と抱き合ってた…
やばいやばい。

落ち着けあたし。大丈夫だ。

「愛弓、そろそろ教室んなかはいろ?」

「ふああ、はい」

なんて間抜けな声を…

「おい、そっちドアじゃないぞ
大丈夫かー?」

先生はまた笑う。
やっぱり大丈夫じゃないかも…