「愛弓?」

先生の顔が、目の前にあった。

「わっ…!?あ、すいませんっ」

「大丈夫か?」

先生は優しい顔をして、私の顔を覗き込む。
思い出したくなかった、思い出たち…

「愛弓?」

だめだよ先生…
私、先生の優しさに甘えちゃうよ…

小学校のころの記憶から抜け出せなくて、月だの星だのといった、大好きだった宇宙から逃げた。

図鑑も望遠鏡も、ひとまとめにして押し入れにしまった。

だから、だめなの…
大好きだった宇宙。いまでも諦められてないの…

「せん…せい」

目の前のプリントに、涙が落ちた。
私の涙だ…

「愛弓?…ど、どうした?」

「私も…宇宙にいきたい…です」

涙はこらえてもこらえてもあふれてきて、私の頬をつたう。

「…」

先生は無言で私を抱きしめた。
あったかい…

1回泣き始めてしまうと、なかなかとまらない。

「先生…先生…
私も宇宙にいけますか?」

私は泣きながら、ゆっくりとはなした。
先生はすべてを聞いてくれた。

「いまでも宇宙は好き?」

「…大好きです。」

先生と同じくらい、好き。

「ならいける、お前なら絶対いける。
俺のぶんまで頑張ってくれ!」

「はい…っ」