部屋の中に大量に積み重なって、部屋中が紙束で埋まっていく。

それでもやっぱり、その書いていった小説は完成しないでどんどんと積み重なっていく。

全く完成する気配の無い物語。積み重ねてから触れもしない。
だって結末を書くとこが出来ないんだもん。
結末をどう書けばいいの?
何をどうして結末を書くべきなの?
私自身が何を幸せとして、何を不幸としているの?
それ自体が分からないの。もう何もかも分からない。
今の中で自分の行動が一番分からない。

そもそも終わりって何なんだろうか?

誰かそれを教えてくれる人はいないのかな?

人間にとっての終わりは死を意味する時。
じゃぁ、物語の本当の終わりって何なんだろう?
そこが自分にとって、一番わからなくて理解できない事。
わかっている事は一つだけ。
自分が物語を作ることをやめればいい。
いっそ何もしなければいい。
何度それを決意したのか分からない。何度止めようとしたんだろう。
書かないと決心しても意味無かったんだ。
決めても無意味で、結局は書き続けた。止める事ができなかったんだ。
生きるのも死ぬのもしたくなくって…
どちらにも立つ事ができなくなって…
学校に行く事すらもしたくなくって。

何もかも面倒になってどうでもいいように思えてきた。
自分を守る為に書き続けていた気もした。
自分を守っているもは物語の中だけだ。
部屋から一歩も出ないで、ひたすら書き続けた。
現実を直視したくない。というよりも、現実を見たくなかった。
誰も私を必要としない。
私なんていなくても平気なんだから。自分は一人で孤独。
そう考えて今まで生きていた。

誰か分かってくれる人がいればいのに…

そんな淡い期待も、私は持たないことにした。
だって意味無いんだってわかったんだもん。
誰も私を必要としていないんだから。
両親だって、私じゃなくて妹達に関心が向いている。
私はどうでもいいんだろうね。

もう何が何だか分からないよ。だって何でこんな目にあってるの?
それ自体もわかんない。
なんにもわからない。
何をしたいのかも。私が何を望んでいるのかも。
何を欲しているのかも…もう何一つ分からないんだ。
誰か私を助けてください。



朝―
暗い部屋の中で、生き続ける自分。もうどれだけの日が過ぎていった?何ヶ月…何年外に出ていないんだろう?
一応水とかご飯の飲食はしている。
お風呂にも入ってる。外に出ないだけ。
いつもと同じように、私はのそのそと起き上がる。
起きてまず目にするのは、自分の書き溜めていった物語の紙の束。
さて、コレをどうすればいいことやら。
いくつもの物語を終わらせていない。
終わらせることが出来ないだけなんだけど…
それをどうしようか考えていた。どうする事もできないけど。
時計に視線を向けてみれば、9:00だ。
今日は寝すぎたのかもしれない。
ゆっくりと背筋を伸ばして、私服に着替える。
ドアの外には、トレイに乗ってる朝食。
部屋の中に入れてPCをいじりつつ食べていく。
食べ終わった食器は同じように外に出す。
携帯小説のサイトに入って、もくもくと作業を進めていく。11:00になる少し前くらいに、サイトから少し移動して掲示板を覗く。
自分が立てたスレッドに入り込めば、今日も同じ人から書き込みがあった。
最近書き込んでくるレンという人物。
レンの話によれば、高校一年生らしく自分と同い年とわかり、そこで話しが盛り上がった。
その事により、私はレンに心を開く事ができた。
その人との関りによって、私の世界が変わっていくことに…
私はまだ気がつかなかった。

レンが自分の生活を変化させていく。
その事に気がつくのはもっと先の事。

翌日―
グッと伸びて、PCを開いた。
チャットにはレンの書き込みが入っている。

《おはようヒカリ。起きてるか?》
《おはようレン。今さっき起きたところ。》
《今?!学生なんだろ?今日は休みなのか?》
《ちょっとした事情で、学校に行ってないの。触れないでくれると嬉しいな。》
《わかった。それについては触れない。やっべ、先生来たからまた後でな。》
《ガンバー^^》

授業って所だよね…先生が来たってことは多分。学校か、懐かしいな…何年ぶりにその言葉を聞いたんだろう。
最後に言ったのは何年生なんだろう?小中と記憶が無いし、一番最後は中一か中二?
小学校の卒業式には出てないし。中学も出てない。
そりゃわかんないか。
そういえば、学校の先生が何回か来ていたような気がする。
会ってないけどさ。
レンってどこの高校なんだろう?口調からして男子だよね?
でも、最近は男子みたいな口調の女子もいるし…
チャットじゃそこらへんが分からないや。
そんな事を考えていれば、ノックの音。珍しい事もあるもんだね。
戸を開ければ二人が立っていた。
「……何?」
「みく、学校に通わない?」
「みくの学力であれば、余裕でいける高校はいくらでも…」
嫌だと首を振って、中に戻ってドアを閉めた。
二人は何も言わずに下に戻って行った。
こんな子いらないくせに…本当はいらないくせにね。
小中と見放していたじゃん。今更なんだっての。
今まで弟達しか見ていなかったじゃん。
絶対学校に何か行かない。外になんて出たくない。
掲示板から移動して、また同じように携帯小説を創作する事に没頭した。

「ん~…こんなもんかぁ…」
ある程度進めて、ログアウトした。
レンから何か書き込みされているのかな?
《ヒカリ!!助けてくれ!!》
ヒカリは私のニックネーム。
今の自分とは正反対になりたかったから。
暗闇から外に出たかった。
暗い中に居るから、”ヒカリ”が欲しかった。
外に出たくないと思ってるのにヒカリが欲しい…
随分と矛盾した考えを持ってる自分を嘲笑って、鼻で笑った。
そんな感じで単純につけたけど、結構気に入ってるんだよね。
それはおいといて、どうしたんだろう?
《はい?》
《天文学?そんな感じの部類なのか分からないけど、わかんなくてスッゲーピンチ!》
《一体何があったの?》
《オーロラについて何かを調べて来いって言われた。何か知ってないか?》
《オーロラ?私ある程度の神話とかなら知ってるよ?》
《教えてくれ!!》
《でもかなり長いし、打ち込むと凄い事に…;》
《それなら電話して。090-****-****》
《はい?》
《また後で!昼は13:00からだから。》
一方的過ぎて話しについていけずに、レンは退出していった。
ここが私だけだったからよかったけど、他の人が居たら大変だっただろうね。
てゆうか、完全にレンに電話しなくちゃいけない感じ?!
電話しなくちゃいけない?!しなかったっら怒られたりする?!
どうするべきだべ?!どうするべさ?!
とりあえず落ち着こう。混乱しすぎて言葉がおかしくなってた。
う~…電話しないと…でも…


電話をするべきかしないべきか…13時までずっと悩み続けていた。



レン視点――
「であるからして、ここの公式は…――」
教師のクッソつまんねぇ話を右から左へ流しつつ、窓の外を見つめていた。
考えるのは授業のことでもなく、ヒカリの事だけだった。
ヒカリの事を知ったのはここ最近の事。
高校入学して、楽しいと思えることもあるけど…
それと同時に何かつまらない。
なにかこう、自分のいつもの生活を刺激してくれるモノはないかと考えた。
それでもなかなか見つからないんだよな。
適当な掲示板を覗き続けていたら、ヒカリのスレッドを見つけた。
最初は、ただの冷やかしのつもりだった。
でも、いつの間にか共感するようになっていたんだ。
ヒカリのスレッドの内容は、少し不思議だった。
《生きる意味なんてあるのか》なんて書き込みは正直驚いたけどな。

今まで覗いてきた掲示板も、自殺希望者とかの掲示板にもあったけどそこまで生々しいモノは無い。
途中で飽きて書き込みもなくなっていた。
それでも、ヒカリは書き込みを続けていたから興味がわいただけだ。
それだけだったんだけどな。
「それじゃ、時間が無いから今日はここまで。復習をちゃんとするように。」
話しを聞かないでいたら、いつの間にか授業終了時刻。
チャイムがなって、昼飯だ。さて、ヒカリは電話をかけてくれるだろうか?
「お~い!飯食おうぜ♪」
「おう、チョイ待ち。弁当出す。」
かばんの中に入ってる弁当箱を取り出したら、携帯が震えた。
「着信か?」
「だな、ちょっといいか?」
「いいぜ。ここに座ってる。」
俺の席の前に座って、パンを加えるのを見て俺は電話に出た。
「はい。どちら様で?」
《あの…レン…ですか?ヒカリです。》
「…はっ?え?ヒカリ?!」
《そうですけど…?》
まじ…?ヒカリって女だったのか?
ヒカリの声を聞いて驚いた半面、何だか視線は痛い。
《レン?どうかしましたか?》
「悪い!ちょっと待っててくれ!」
何でで待っててくれって言ったのかって?
その理由はすぐわかるっつの。
「ヒカリって誰だ?女の名前だよなぁ…?」
「ちょっと待て。今電話中だから…」
「「「リア充爆発しろーー!!」」」
「うるせぇぇ!」
電話を持って俺は屋上に避難してきた。

ヒカリ視点―
私は覚悟を決めて、レンに電話した。
2.3回のコール音がしてから、レンは電話に出た。
レンがちょっと待っててと言っていたから待ってたけど、何か電話口が騒がしい。
数分してから、レンがお待たせと言った。
「大丈夫ですか?」
《平気平気。んでさ、オーロラなんだけど…》
「あ、はい。説明しても大丈夫ですか?」
《メモの用意も出来てるし平気。》
「それじゃ、説明しますね?オーロラは昔……――」
レンがメモを取りつつ聞いているので、所々で確認を取りつつ話していく。聞きやすいようにゆっくりと。

数分後―
「…といわれています。私が知っている範囲ではコレで以上ですね。」
《おー、結構あるな。助かったよ。サンキュ。》
「いえ、お役に立ててよかったです。」
《また何かあったら、電話していいか?》
「あ、はい。わかりました。」
《それじゃ、またチャットで。》
「はい、失礼します。」
通話ボタンを押して、携帯を閉じた。
人と長々と会話したのって久しぶり。
凄い疲れたかもしれない。
ベットに仰向けになって、ボケッとした。
レンの声に驚いたのもあるけど、声だけだど優しそうなイメージ。
何かそう思えちゃうのって不思議だよね。
PCを開いて、私はまた携帯小説を作成し始めた。