イヤなやつ…なのに、



「お、重い…」


私はおぼつかない足取りで歩く。


「無理しなくていいよ。俺が運ぶからよ。」

そう言って、拓斗はみとれるような優しい笑顔で笑った。

なんか、王子様みたいなんですけどぉ~。

私は、慌てて、


「ううん、だいじょうぶだよ!」

と、顔を反らした。


・・・あれから運び続けて40分くらい。


「ハァハァ…」

ふらついて転びそうになった私を、支えてくれた。


「あ、ありがとぉ」


「これで最後だから、がんばろ。」


2人で資料室に入る。


「ね、来夏ちゃんって」


「あ、呼び捨てでいいよー。」


「来夏ってさ・・・」


すると急に、


ふわっ


抱きしめられた。


「きゃっ… た、たくと?」


私はあわてて離れようとしたけど、がっちり押さえられてて離れられない…

こ、これは夢なの?
この状況に心臓がばくばくいってて…。

回された手と当たった体から、拓斗の体温が伝わってくる。


「来夏って男に免疫ないよな。」