コロンバインは穏やかな眠りからゆっくりと目を覚ました。ふと見上げた天井には見事な装飾が施されている。
どこ?
驚いて身体を起こした。
はぐった上掛けは柔らかく、軽い。
違うのはベッドだけではなかった。
壁面を覆う窓は大きく、明るい日差しがたっぷりと入ってくる。
ぼやける視界でも、室内が自分の家より広いとわかった。
手を壁に這わせるようにして、ベッドを降りる。
サイドテーブルの上に見つけたいつもの眼鏡をつけて、ようやく意識がはっきりしてきた。
昨夜、アルバートという青年に眼鏡を奪われ、追いかけた先で野犬に襲われた。
それから、助けてもらって森の小屋で観測をして、そのまま眠ってしまったのだ。
「・・!観測ノート・・」
ノートはサイドテーブルには見当たらない。
もしかして落としてしまったのかも。
コロンバインは慌てて、部屋を出ようと足を動かした。
その時、ドアの向こう側からコンコン、と優しげなノックが響いた。
「コロンちゃん?起きてる?」
声は、聞き覚えのある男性のものだった。
ヒューイと呼ばれていた、うす茶色の髪をした昨夜の青年の一人。
「はい」
コロンバインが返事をすると、ヒューイは失礼するよ、と入室してきた。
着替えをしたらしく、昨日よりもきちんとした身なりをしていた。
真っ白なシャツに紺のベストがよく似合うし、髪も上げて固めてあり、顔がよく見えた。
「おはよ、と言ってももうお昼だけどね」
ヒューイの言うとおり、外の陽は完全にてっぺんを越していた。
観測に慣れているコロンバインは徹夜は得意だった。
にもかかわらずベッドの寝心地の良さの為か、随分熟睡してしまっていた。
しかも衣服も昨日のままだし、髪だって寝癖でぼさぼさだ。
さすがに恥ずかしくなって目を逸らす。
「おはようございます。お世話になったみたいで・・すみません」
頭を下げると、いいんだよ大したことしてないし、とヒューイは笑った。