「りーんー!!」
ゆっくり、と言うより
ノロノロと歩いていた私を
いきなり大きな声が呼び止めた。
けれど、この声は決して不快ではない。
ころころと鳴る鈴みたいに少し高いけど
優しい声。
私と一年生の頃クラスが一緒で
一番仲のよかった 須藤 あかり の声。
「おはよー!」
あかりはブンブンと手を振りながら
色素の薄く茶色いふわふわの髪を
夢のように膨らませ
こっちに駆け寄ってくる。
「おはよ、あかり。
あんまり走るとセット崩れるよ?」
私は頭一個分下にある
あかりの頭に手を置くと
慌てたように髪をときだす。
「あぁ!?
せっかく始業式だから
ゆるふわボブにきめてきたのに!」
せかせかと視界の下の方で
騒ぐあかりをいさめて
また二人でゆっくり歩き出した。