ガチャ
立ち入り禁止なのに鍵が空いている屋上。
先輩たちが鍵を持ち出して
勝手に開けてそのままだという話がある。
そのお陰で話す場所があるけど。
「で、何。」
いつもより、当分素っ気ない話し方のはるひ。
もともとおとなしいけど。
「はるひが俺と付き合った理由。」
「あのさ、そのはるひって言うのやめてくれない?」
「なんで?」
「いきなり、綾瀬からはるひに変わったし。
呼ばれると寒気がする。」
酷い理由だな、と思ったのは
口にはしない。
「まず、綾瀬って呼ぶことから。」
「綾瀬が俺と付き合った理由。」
「遊び。」
「違うだろ。美智子さんに聞いたから。」
聞いたなんて、真っ赤な嘘。
あの日美智子さんが話してくれたことが
どこまでなのか、とか
聞こえてる筈がない。
「…っ!」
「教えて?綾瀬……。」
「………わかったわよ!」
言えばいいんでしょ!と強めな態度で言った。
今から、俺の心が傷つくことになろうが
綾瀬を知ることに精一杯だった。