理央が目を覚ますと白い天井に鼻を付く薬品の匂いに反応するも頭は働かず
ここは何処だか分からないのに思考が働かない、働いてくれない


ただ、目の前に不器用な涙を流している晋弥がいると言う事だけは理解していた


「晋弥、兄ちゃん…」

「理央!?」


晋弥は理央を強く抱き寄せてしまう、親がいないから人目無く気にしないまま
強く、折れそうな程理央を抱き締めて壊れそうに掠れた声で呟く


「…なんで、無理すんだ」


「…兄ちゃん…」


耐えきれないと言わんばかりに理央が着ている服の袖を捲れば、白い肌にくっきりと刻まれた無数の線のような傷


「…も、やだ…離して…!」

「答えろ、理央」



理央はひたすら首を左右に振る、懇願するような声だろうと縦に振る訳にはいかない
彼女達の為ではない、理央は自分自身の為



「ごめんね、言うわけには…いかないの」

「…理央、…」



酷い顔をしていただろう、涙で瞼は赤く腫れてずっと噛んでいる唇は鬱血の跡を見せる




晋弥は視線を外に移した後に、理央は新緑を瞳を写して
その景色が白黒な気がして、昔よりもずっと悲しくなる景色に涙が溢れた気がした




続く





※用語



エスケイピズム→現実逃避
メロウ→熟している、甘い、柔らかい