「…………」
(私、この人とどうすればいいの⁈)
いきなり2人きりにされてしまった気まずさに、彩は狼狽えた。
「お嬢様」
いきなり誉に声をかけられて、彩は飛び上がる勢いだ。
「は、はい!何でしょう!」
「そろそろ、麦お嬢様がお着きになると思います。
お着替え、お手伝い致します」
誉は優しく微笑んだ。
「…え?」
慌ただしく朝を迎えたので、自分がまだパジャマなのに気づいた。
だけど……
(⁈着替え⁈ 手伝うって言ったの⁈この人!)
「けっ、結構です‼︎
自分でできますから‼︎」
彩は、いたたまれなくなり、自分の部屋のある2階にダッシュで駆け込んだ…。
後ろ手で、ばんっ!と部屋のドアを閉め、はぁはぁと荒い息をつく。
「なんなの⁉︎ あの人…。
着替え手伝うなんて、さらっと…。
変態⁈」
康介と美優に流されるように、執事を受け入れてしまったけど、頭は大混乱だ…。
ふと、目覚まし時計を見る。
多分、父と母が目覚ましをいつもより遅く設定したのだろうが、誉が自分を起こした時間は、決して慌てて支度をしなければいけない時間ではない。
(この時間なら、今から支度して、朝ご飯食べても、まだ余裕かも…。
ということは、時計合わせたのも、あの誉っていう人なのかな…?)
父と母がそんなタイミング良く、目覚ましを設定出来るはずがないと思い直した。
(なんかあの人、いちいち完璧な感じだな…)
はぁ…と溜息一つ、彩は気を取り直して、クローゼットから、いつもの制服を取り出す…。
「え⁉︎ いつもより、制服が豪華⁈」
自分が通っている学校とはいえ、やることがあまりにもあからさまで、彩は何て事になったんだと、頭を抱えたくなった………。

