「ちょっ、麦ちゃ…」
「それにしても、誉が彩の執事になるとはね〜」
麦は彩の声を無視して、誉の近くに行き、自分の腕を組んで、冷ややかに見上げた。
「伝説の執事サマが、Bクラスのお嬢様についてて、いいのかしら。
Aクラスのお嬢様方についてた方がお金になると思うけど」
麦は皮肉たっぷりに誉に笑いかける。
すると誉は、ははっと笑い、
「伝説なんて、大袈裟です。
それに、私は上から言われた事に従うだけですから…。
私にとって、AクラスもBクラスも関係ありません。
お嬢様の為にこれから精進するつもりです」
誉は皮肉もなんのその、優しく微笑んで答えた。
麦はそんな誉を見て、ふんと鼻で笑う。
「つまんないわね…。
ま、これから一緒なんだから、あんたの性格もじっくり観察してやるわ。
執事で、よくある鬼畜とかドSって事も…」
「ちょっと!麦ちゃん!
失礼言い過ぎだよ!」
彩はあたふたして、麦の腕を引いた。
麦はとにかく歯に衣着せぬ言い方をするから、こちらはヒヤヒヤする…。
しかし誉は、全く気にする様子もなく、微笑んでいる。
「あのねぇ!
こいつは、「完全無欠」とまで言われてる謎が多い執事なの!
人間は、欠点があってこそ、人間よ!
あんたみたいな騙されやすい子が、一番餌食になりやすいんだからね!」
麦は、彩の腕を逆に握って目線を合わせる。
「すぐに心、開いちゃダメよ!」
(…麦ちゃん、目が血走ってる…)
この幼馴染は、彩の事に関しては、恐ろしく過保護になる…時がある。
彩は、学校に行く前から、もう完全に疲れてしまっていた…。

