「何よ」
怪訝な顔で、麦は掴まれた腕を振りほどく。
彼女は超がつくほどのドライなのだ…。
幼馴染だろうが、ベタベタされるのは嫌いだ。
「私、今日聞いたの! Bクラスに入る事も、執事がつく事も!
なんか成り行きでこんな事になっちゃって、もう大混乱なの!
まだ、心の準備ができてないし!」
畳み掛けるように、彩は負けずに麦に詰め寄る。
「ちょ、近いわよ! 落ち着きなさいよ!
…あんたがBクラスに入るのは、結構前に決まってたはずだけど…。
私はあんたがもう知ってると思ってたから、言わなかったけど」
「うちのお父さんとお母さんの性格知ってるでしょ⁈
今日、言われたんだってば!」
「あ〜。 忘れてたんだ、康介さん。
らしいわね〜」
麦は、ふっくらした手を口にあてて、笑いを堪えた。
「ちょっと! 笑い事じゃないんだからね!」
「でも、もうどうしようもない事なんだから、諦めなさいよ」
「そんなこと言ったって…」
「あ! もう、こんな時間!
あんたのせいで、遅刻だわ」
麦は彩の意見を遮るように時計を見て、彩から離れた。

