ドアを開けると、邪魔にならない所に、誉は立っていた。
「…お、お待たせしました…」
「お嬢様」
誉はじっと彩を見つめる。
「な、なんでしょう」
「制服が、良く似合っておいでです」
そう言うと、またにっこりと微笑む。
「なっ……‼︎」
彩は生まれてこのかた、父以外の男性に褒められた事がなかったので、パクパクと魚のように口を開けたり閉じたりしてしまい、さっきよりも更に顔が赤くなる。
(なんなの⁉︎この人⁈ )
彩は恥ずかしくて顔が上げられず、下を向いた。
「お嬢様、お鞄をお持ちします。
下に降りて、朝食を召し上がって下さい」
誉は彩の気持ちもなんのその、少しも変わらない顔で、さりげなく鞄を受け取り、一階へ誘導する。
(あんなキザな事、さらっと言っといてぇ〜!
顔色一つ変えないなんて!)
しかし、そんな事も言えずに、
「………はい」
と彩は赤い顔のまま、先に一階へと降りて行くのだった…。

