「夏樹」

「何?」

「ありがとう、ゆーちゃんってすごく夏樹に似ててね。夏樹見てるとまたゆーちゃん、に会えた気がするの」

と私はそっと夏樹から離れた。

「友梨ごめん」

「いいよ」

と笑う。

「いや、大事な者が無くなるってすごく悲しい事だから、それは俺も知ってるから」

ゆーちゃん見たいでなつかしい。

「で?今日は何するの」

「いや特には決めてない」

「じゃさ、山を案内して」

「いいよ」

と夏樹は私を抱き上げた、そしてお面をつけた。

「いくよ」

「うん」

と崖から飛び降りる。でも、そこは高くて翼があるみたいで嬉しかった。
山をどんどん越えていく、鳥たちはいつもこんなふうなのかな?

「大丈夫?」

と声をかけてくれた夏樹

「大丈夫」

と言うと前を見る。
夏樹だけの温もりがあった。温かくて優しい香り。

するとある山の頂上に夏樹は足をとめた。

「ここは俺が妖怪になったって、分かった時の場所だ」

「え?」

「俺はここで死ねない体を持ったんだよ。多分俺500才ぐらいだと思う」

「すごい、じゃもの知りだね!」

「違う、俺は山しか知らないここから離れる勇気がない」

とうつ向く

「でも、死にたいって思った事はないでしょ?…ならいいじゃない、何かの目的の為に生きるって素敵だと思うよ」

と笑うと

「ありがとう」

と微笑んだ夏樹。

「私は目的の為に生きる事って出来ないしそれはゆーちゃんが居ないと出来ないから、だから」

「いいじゃか、ゆーちゃんが居ないと出来ない事、それってゆーちゃんがとっても大事な人だった事だろ?」

その言葉は私の真似をするように言った、けど夏樹のように笑えない。

「うん、ゆーちゃんは大切で大事な人だったのに」

と言っていると、息をするのが苦しくて、鼻の先が痛い。その時そっと頬を流れる。雫はしょっぱい。

「怖いよね。大事なものが無くなるって、俺も怖かったから分かる」

「うん、あと苦しいよね」

と語り合いながらいつの間にか夕日が山に沈んで行く。私の涙と一緒に。
私はその景色を見ていた。多分夏樹も見ている、何かが消える姿を。

「ねぇー、夏樹」

「何?」

「自分で大切なものの区別ってどうやってつけるのかな?」

とフと思った事を言ってみた。すると夏樹が悲しい声で言った。

「分からない。俺にも」

その言葉はこの世界に響いた気がした。

すっかり夜になった。

「ありがとう夏樹」

「うん、遅くなって、家の人心配してるよな?」

「平気だよ。」

その時夏樹は思いきったように言った。

「送ろうか?!」

「うん、お願いします。」

何でだろう?嬉しいけど、胸がドキドキしている。体に響てる。
そのしぐさに違和感があったのか

「どうした?」

と夏樹が心配してくる。

「何でもない」

と私は夏樹の先に歩く。

「次どこ行く?」

「え?」

夏樹が聞いて来る。

「だからどこ行く?友梨の好きなところに行こう、人間の変装して街でもどこでも行くから」

「じゃ今度ね。お祭りがあるんだけど行かない?この時期はいつもゆーちゃんと行ってたんだけど…」

「よし!行こうゆーちゃんが居たときみたいに友梨が楽しくなれるように」

と笑う。嬉しいと言う言葉が私を包む優しく包む。

しばらく歩くと家の前におじいちゃんが居たビックリした。

「友梨じゃまた」

とおじいちゃんから夏樹が見えるか見えないところで夏樹が言った。

「ちょっと待ちなさい。」

おじいちゃんが歩いて来た。
驚いた。

「おじいちゃん?」

おじいちゃんが夏樹だけを見ていた。

「お前さん少し家によって行け」

「え!?」

夏樹はお面をしているから分からないけど多分夏樹は驚いた顔をしているだろう。

「おじいちゃん何言ってるの」

「はいでわ」

と夏樹は家に寄る事になった、夏樹は何かを感じ取ったのか。
家の中に入るとおばあちゃんが待っていた

「お帰り、友梨…あらそちらは?」

と夏樹を見ると

「はじめまして夏樹といいます。いつも友梨ちゃんにお世話になっています。」

その挨拶はゆーちゃんと似ていた。はじめてあったときの事

「こんにちはここにお友達が遊びに来てると聞いて来ました。」

私は思い出す。あの時のゆーちゃんは
ガチガチだった。