ちいさな恋のものがたり。


そこまで読んで、次のページに入った所で、間に一枚の紙切れが入っていることに気がついた。


ざらざらした褐色の古いメモの切れ端。


誰かが借りた時に、栞にでもしてたのかな。



私は気に止めず次の話を読もうとした。が、本を少し傾けたことでそのメモがひらり、と床に落ちてしまった。

このままゴミとして放置するのも気が引けるので、私はしゃがんでそのメモを拾った。



「あとでゴミ箱にでも捨てに...、」

なんとなくメモをひっくり返してみると、そのには消えかけた黒いインクの文字があった。

「...ここに、名前を書け?」

書かれていた文字を口に出す。
なるほど、たまーにあるよね...移動教室の机の落書きとかに。


その文から1行あけて、『1年3組 水上 裕太』と書いてあるところをみると、このメモを挟んだのはどうやらその子らしい。


でもその後に名前など一文字も書かれていなかった。


あーあ、こういうのは人気ありそうな本でやると続けてくれる人も多いんだろうね。

顔も知らない 水上 裕太君とやらにむかって、私はおもわず苦笑を漏らした。



私はそのメモを本に戻し、そのままカウンターへと向かった。