高校2年生、春。

「えー、今日から新学年スタートなわけだがっ、1年生の手本になれる上級生を目指すように心がけて生活しましょう!」


ホームルームのこの時間、去年から引き続きうちのクラスの担任をすることになった野口先生は、先ほどから教壇で私達の今年の目標やらなんとかについて熱く語っている。


「それでは連絡事項も終わりましたので、ホームルームを終わります。寄り道をせずまっすぐ家に帰るように!以上、号令!」


春の日差しで微睡んでいたせいか、慌てたように日直が「起立!」と一声あげる。

それに従ってガタガタざわざわと席を立つクラスメイト達。


号令が済むと教室は徐々に話し声でうるさくなり始め、それから散々と教室から人が出ていく。


ものの数分すると、教室にはほとんどの人が残されていない状態になった。



私、鈴谷 百合香は窓際の自分の席でただただ、ぼーっ...と、していた。


窓の外には校庭が見えて、サッカー部や野球部、ラグビー部に陸上部...そんな、いかにも『青春真っ只中』な生徒達が集結しつつあるようだった。



青春。青春ねぇ...。

なんで青い春なんだろう...。



開けられた窓からひらりと舞い込んできた桃色の花びらが、私の机にふんわり落ちてきた。

摘みあげてなんとなく観察しながら、私はそんなどうでもいいことをのんびりと考えていた。