「今日、転校生来るんだって」
知ってるよ。
だって、陸の事だもん。
けど、その後の台詞に私は驚いた。
「それも、このクラスに――――」
「えっ?! このクラスっ?」
つい、驚きに油断して反応してしまった。
泉は、不機嫌な顔のまま、私の席の右隣を指さした。
そこには、昨日までなかった机と椅子が置かれたいた。
うっそ。
陸、同じクラスなの……?!
唖然とした顔で増えた机を見ていると、明らかな嫉妬を浮かべた瞳で泉が私を見ている。
「一緒に来たやつ、転校生だろ? 何で転校生と知り合いなんだよ。何で一緒に登校してきてんだよ」
「……ちょっと、事情があって……」
機嫌の悪さが滲み出た少し怖い顔で、立ったままの私の袖を掴む。
見たことのないその顔にうろたえていると、手首が大きく脈打った。
告白の時に掴まれたそこが、今更のようにドクンドクンと感情を持った生き物のように動き出すんだ。
握られた時の痛みがぶり返したように、圧迫感も覚える。
告白してきた泉の顔が鮮明によみがえり、彼に言われた『好き』が耳の奥で繰り返し繰り返し聞こえてくる。
トクトクと心臓は鳴り出し、キュンとしてくる胸の奥。
耳や顔は、熱を持ち始めている。
けれど、そこでハッとする。
いけない。
力を解放していた……。
手首に感じた痛みも、トクトクする心も自分の感覚じゃない。
これは、泉の心の中の感覚だ。
切なく想う私への気持ちだ。
自分の感情なんかじゃない。
私は、直ぐに力を閉じる。
感じてしまった想いに動揺しつつも、慌てて笑顔を取り繕った。