―――― 姉弟 ――――
陸と別れたあと、一人階段を登り自分の教室へと入った。
すると、一歩踏み込んで直ぐに、黒谷の威圧的な声が私に向けられる。
「ちょっと、惣領さん。朝から男子と登校なんて見せ付けてくれるよね。さっきの彼は誰? 新しい男? それとも二股? モテる人の考えてる事が全然解んないっ」
ふんっとついた黒谷の鼻息で、飛ばされてしまいそうな勢いだ。
二股って、私誰とも付き合ってないけど。
だいたい、朝一番の台詞がそれ?
おはようくらい言えないの?
言い返したい衝動をグッと抑え、平常心を保つ。
いけない、いけない。
こんなことに、いちいち心を乱されてちゃ駄目だよ。
気持ちを整えて教室内に目をやると、おかしな空気が漂っていた。
私に向かって、周囲から好奇の視線が集まっていたんだ。
どうやら、黒谷だけじゃなくクラスの子達も、私と一緒に登校してきた陸の存在が気になるらしい。
確かに。
私は、今まで常に一人でばかり行動してきたから、みんなが気になるのはわかる。
けど、こういう視線て鬱陶しくて仕方ない。
それでも、そんな感情は微塵も見せず、私は穏やかな表情を作り、たった今嫌味をいってきた黒谷を見る。
「おはよう。黒谷さん」
質問には一切答えず、挨拶だけしてさっさと自分の席へ向かった。
どうせその内、嫌でも知れ渡るのだから、いちいち説明なんてしてられない。
そう思い、窓際の席へ行くといつものあいつ。
説明しないと納得をしない人が一人……。