一旦部屋に戻り、制服へ着替える。
いつも通り眼鏡をかけ、腕時計をはめて鞄を手にもう一度リビングへ向かった。

朝御飯を用意しなくてよくなった分、今日は余裕がある。
いつもは出掛けにしていた祖母への挨拶を、先に済ませることにした。

チーンッ

「お祖母ちゃん、おはよ」

写真に向かって朝の挨拶をする。

そんなお祖母ちゃんの写真を見つめていると、仲良くしなさいね。といわれている気がして、一つ頷いた。

リビングへ行くと湯気の上がるお鍋から味噌汁をよそい、詩織さんが私を見て首をかしげている。

「あら、未知ちゃん眼鏡なの?」

そっか。
会った時は、二回とも家の中だったからコンタクトだったっけ。

「私、家以外は、ずっと眼鏡なんです」
「そうなの?」

相槌を打ちながら、テーブルに朝食を並べていく。

「あ、陸。あの子まだ寝てるのかしら?」

思い出したように言っているところへ、父が寝ぼけ眼で起きてきた。

「はよぉ」

ふぁ~っ。と豪快に欠伸をして、ストンと椅子に腰掛ける。
詩織さんは、父へ愛しそうな笑顔を向け、また息子のことを思い出す。

「未知ちゃん。陸、見てきてもらっていいかしら?」
「あ、はい」

言われるまま、陸の部屋へと向かった。