引越し屋さんに次々と荷物を運んでもらい、私たちはそれをばらしていった。

詩織さんは、父と寝室で。
私は、陸君と彼の部屋で。

彼の部屋に運ばれてきた大きい物は、ベッドと箪笥。
それに本棚くらいだった。

黙々と続ける引越し作業。
明るい日差しが窓辺から射す六畳の部屋で、荷物を片していく。

会話のないまま、ただひたすらにダンボールを開けては荷物を出す。
そんな無言の空間に気詰まりを感じ、私は彼に話しかけてみることにした。

「ねぇ、荷物少ないんだね」
「……うん」

山のような荷物を想像していたのに、詩織さんの荷物も陸君の荷物もそれほど多くはなかった。
気を使って処分してしまったんだろうか。
だとしたら、なんだか申し訳ない気がしてくる。

それとも、男の子ってあんまり余計なものを持たないものなのかな?

陸君は、ダンボールの中から荷物を取り出し短い返事をするだけ。

「ねぇ、カーテン。一応そのままになってるんだけど、自分の好きなやつに替えていいからね」
「うん」

父の書斎だった時のまま、カーテンは替えていない。
少しくすんで来ているブルーのカーテンを指差し、陸君の顔を見た。
けど、相変わらず荷物ばかりを見ていて少しもこっちを見ないし、返事も「うん」だけ。

人見知りしてるのかな?

最初に会った時から、ほとんど口を聞いてない。