翌朝。
ここ三日続いた力仕事のおかげで、身体がギシギシと音を立てている。
軋む身体を何とかベッドから起こし、顔を洗って動きやすい服装に着替えた。
朝食の準備を簡単にしてから、まだ起きてこない父の部屋へといく。

「お父さんっ」

呼びかけながら部屋に入れば、父はベッドの上で大の字になっていた。
のんきに大きな鼾をかき、未だ眠りの中にいる。

「お父さんっ、起きて。朝御飯食べちゃってよ」

会社と連日の力仕事に、父もかなりグロッキーみたいだ。
ゆさゆさと揺り起こしても、なかなか目を覚まさない。

そうやって、父の体をゆすりながら。
明日からは、こうやって起こす事もなくなるんだろうなぁ、なんてぼんやり思った。

父と二人、食卓でパンをかじる。
サクサクと香ばしい音と薫り。
まだ眠そうな父へ、濃い目の珈琲を淹れて渡した。

目の前で寝ぼけた顔のまま、食パンをかじる父をみながら、二人でご飯も、もうないかもしれないなぁ。としみじみ思う。

二人から四人に増えるわけだから、寂ししいはずなどない。
どちらかと言えば、明るい家族の絵がこの先にはあるはずなのに、なぜだか心はキュッと切なくなる。
そんな思いを心の隅へやり、食パンの欠片を口に放り込む。
ゴクリと飲み込み、壁の時計に目をやった。

あと三十分もすれば、この家は四人家族になる。
きっと、賑やかな毎日が待ち受けているだろう。