「本はどうするの?」

山のような本の前に立ち、資料を分けている父に訊いてみた。

「お祖母ちゃんの仏間に本棚持って行こうかと思って」

そんな、勝手な。
畳の仏間に本棚?

「お祖母ちゃん、化けて出るよ」

チラリとイタズラに振り返る。

「え……」

頬をピクピクさせている父。
昔からお祖母ちゃんには形無しだっただけに、化けて出るなんていわれて焦ってる。
そんな姿に、クスクスと私は笑った。

なんやかんやで、置く所がないのは仕方ない。
結局、お祖母ちゃんの仏間へ本棚を移動させる事となった。
もちろん、必要のない本は処分した上でだけど。

お祖母ちゃん、ゴメンね。

父の机と椅子はそのままにして、彼に使ってもらうことにした。

そうやって、土曜日が来るまでの間に、私たちは何とか部屋を片付けることが出来たんだ。

「ふぅ~。やっと片付いたね」
「うん」

隣に立つ父へ言うと、満足げな返事と笑顔が返ってきた。
二人で戸口に立ち、奇麗になった部屋を眺めて笑いあう。

これなら、あの無愛想な彼も、少しくらいは笑顔を見せて喜んでくれるんじゃないかな。

「明日、引越し何時だっけ?」
「十一時って言ってた」

「そっか。じゃあ、明日も大変だから早く寝よ」
「そうだな」

疲れた身体をふかふかの布団に横たえ、私たち父子は明日という日に備えた。