―――― 父の思い ――――





神谷母子が帰宅後。
私は、リビングで仁王立ちしていた。
父子二人になったことで、沸々と怒りがわいて来たんだ。

「どうしてこんな大事な事、今まで言わなかったのよっ!」

怒りで開放しそうになる力を、無理やり宥めすかしながらも怒りはなかなかおさまらない。
私は、物凄い剣幕で父に詰め寄る。
学校では、澄ましてばかりで絶対に見せない怒った顔だ。

そんな私へ、父は本当にすまないと顔を引き攣らせている。

私だけが今まで何も知らなくて。
三人は、ずっと以前から知っていて。
きっと私の知らないところで何度も逢ったりしていたのに。

私だけ――――。

一人、仲間に入れてもらえなかった寂しさと、突然降って沸いた再婚話に、頭も心も整理がつかなくて、父に怒りをぶつけることでしか発散できない。

「そんなに怒らないでくれよ、未知……」

父は小さくつぶやき、寂しそうな表情を浮かべている。

あまりのことに怒りが頂点に達していて、父のそんな顔に私は少しも気づかない。