冷蔵庫と食料品の入った棚を覗き、考える事数十秒。

冷蔵庫からバター。
棚からペンネと小麦粉を取り出した。

久しぶりにグラタンでもしよう。

エプロンをし、髪の毛を軽く結わえる。

「よし、作るか」

一人声を出し、鍋に火をかけ焦がさないように小麦粉を炒めていると、キッチンの向こう側にあるリビングで電話が鳴り出した。

「えぇー。今、手が放せないよ」

ここで火を止めるのは本意じゃないけど、鳴り止まない音に溜息をつき仕方なくそうする。

「まったく、誰よ」

ぶちぶちと文句を言いながら、鳴り響く電話に出ると、相手は父だった。

『未知。今からお客さん連れて帰るから、少しキレイな格好をしていなさい』

開口一番そんな台詞。

「はい? 何それ。お客さんて?」

急な事に聞き返すと、なんだか落ち着きのないようす。

『いいから。いつものあの、ダラダラの部屋着じゃなくて。もう少し、ほら。出かける様な格好をしてなさい』

ダラダラの部屋着?
何よそれ、行きなりお客とか、人の部屋儀をダラダラだなんて言って、失礼な話じゃん。

「お父さんの上司でも来るの? それなら、私関係ないじゃん」

ふくれて言い返す。

だいたい、ご飯はどうするのよ。

しかし、私の不機嫌さなど父はお構いなしだった。