―――― 疑惑の痣 ――――





授業が終わり、放課後になっていた。
いつものように、クラスの子達に挨拶をして教室を出る。
黒谷は、今度新しく腕時計を買ってもらうんだ。と仲間たちへ自慢げに話をしていた。
そんな彼女たちを尻目に廊下を歩いていけば、タイミングよくと言うか、悪くと言うか、泉に出くわしてしまった。

「惣領っ」

またも大きい声を出し私の方へ駆け寄る泉は、未だ体操着のままだった。
Tシャツの袖を肩まで捲くり上げ、意気揚々としている。

「まだ着替えてないの?」

少しばかり呆れて見せたあと、無表情で訊いた。

「ちょっと盛り上がっちゃって。授業終わったあとも少しボール蹴ってたら、着替える時間なくなって」

白い歯を見せ微笑む顔は、本当にさわやかだった。
清涼飲料水のCMオーディションに応募でもすれば、すぐにでも採用されそうな気がする。

泉がCMに出演している姿を想像してみたら、あまりにも似合いすぎていて思わず笑みが漏れそうになった。
けど、ここで泉に愛想のいい顔なんてしてしまったら、人懐っこさが倍増して面倒になりそうなので、いつもどおり感情の篭らない相槌を打っておく。

「あ、そ。じゃあ、私は――――」

さっさとこの場を去るべく言って歩き出し、泉の横を通り過ぎようとした。
そんな私を泉が呼び止める。