―――― 言えなかったこと ――――




狭いベッドで抱き合いながら、陸の胸に顔を埋めていた。

「ねぇ……未知」
「……ん?」

右手で髪をなでるその顔を見上げれば、瞳が柔らかな光を宿していた。

「俺ね、ずっと言ってなかったことがあるんだ……。違うな、言ってなかったんじゃなくて言えなかった事……」
「言えなかった事?」

これから話すことに重圧を感じているのか、陸は一度大きく息を吸い吐き出す。
戸惑いを見せるその声に、私は小さく息を呑んだ。
陸は、愛しそうに私を見ていたけど、瞳は何かに怯えているように見える。

「俺ね……本当は、誰とも血の繋がり……ないんだ……」
「え……?」

陸の言ってる意味がよく解からなくて、私はその瞳を覗き込む。

「母さんも父さんも、俺がその事を知ってるなんて、気付いてないと思う」

そのこと……。

「俺、施設から貰われた子なんだ……。だから、死んじゃった父さんとも血が繋がってない」
「し……せつ……」

陸は、悲しいとも辛いともとれる表情で、私を見た後ギュッと抱き寄せた。

胸の中に抱きしめられた事で、陸が今どんな顔でその話をしてくれているのかはわからない。
だけど、胸に顔を寄せた私に聞こえる心音は、心拍数を上げている。
真実を話す事に怯えている。