―――― 愛情 ――――




夏休みに入り。
陸の私へ接する態度が、益々エスカレートしていた。

躊躇うことなく、幾度も囁かれる言葉。


好き

愛してる


傍にいるのが当たり前で、繋ぐ事が普通になった互いの手。
両親の目を盗んでは、抱きしめてくる腕。

その行動を、私は幸せにさえ感じて受け入れてしまっていた。

こんな事してちゃ、いけない……。
お母さんとお父さんを見るたびに感じる罪の意識。

なのに、それを陸に言う事ができない。
悲しい顔が想像できて、どうしても口にできない。

私が罪悪感に頭を悩ませていると、陸は決まって傍に来る。
手をとり、抱きしめ、愛していると囁く。

その囁きに罪の意識は溶けて無くなり、ただ愛しいという感情に呑み込まれていった。

陸が私へ向ける愛。
私が陸に感じている想い。
いつしかそれは、同じものになっていた。

陸を愛している。

心はそれに支配され。
陸さえ傍にいてくれたら、もう何も要らないとさえ思えてしまう。

初めの頃に感じたように。
もしも、陸が居なくなるような事が起きたら……。
そんな想像をするだけで、体が引き裂かれていくようだった。

もう、陸がいない現実などありえないほどに、陸は強く私の中を支配していた。

自分たちに血の繋がりがないのをいいことに、泉が懸念していた最悪の状態へと二人は落ちていった――――。